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丹参(タンジン)生薬の抗がん作用【万隆堂】
万隆堂 / 2014-06-27

 タンジン(丹参:Radix Salviae Miltiorrhizae)は、シソ科のタンジンの根で,その薬効は約2000年前の神農本草経にすでに記載されており、中医学や漢方で古くから使用されている生薬です。

抗炎症作用や抗酸化作用や血液循環改善作用や線維化抑制効果などがあるので、慢性肝炎や心筋梗塞や腎臓疾患の治療に使用されています。さらに近年は、丹参の抗がん作用が注目されており、丹参に含まれる抗がん成分や作用機序の報告が増えています。丹参は、多くのがん細胞に対して、増殖抑制、アポトーシス誘導、血管新生阻害、浸潤や転移の抑制、抗がん剤に対する耐性獲得の抑制作用を示すことが報告されています。
代表的な論文を紹介します。
 
丹参の主要成分であるSalvianolic acid Bが上皮-間葉移行を阻止して、がん細胞の浸潤や転移を抑制する効果がある
 
    【がん細胞が転移?浸潤するときに上皮-間葉移行が起こる】
    上皮-間葉移行(Epithelial-Mesenchymal Transition)とは上皮細胞が間葉系様細胞に形態変化する現象です。上皮系細胞とは、細胞と細胞が接着しながら敷石状(シート状)に配列している細胞です。その敷石状の配列は内外や上下といった方向性を持っています。消化管や呼吸器や泌尿器などの粘膜の表面を被う粘膜上皮細胞、肝臓や膵臓や腎臓などの腺細胞、皮膚の表皮細胞などが上皮系細胞です。
    一方、間葉系細胞は、上皮系細胞のような方向性のある敷石状の配列では無く、ネットワーク状あるいはびまん性に配列する性質を持った細胞で、結合組織のコラーゲン線維を作る線維芽細胞のような細胞です。間葉系細胞は、筋肉組織や結合組織や脂肪組織や骨組織などを構成します。
    上皮系と間葉系の細胞は、細胞を接着する接着因子や、細胞骨格蛋白の種類が異なります。したがって、上皮-間葉移行では、上皮細胞が上皮細胞の性質を失い、間葉系細胞の性質を獲得することになります。
    がんは上皮細胞が悪性化して無制限に増殖するようになった細胞です。元来、正常な上皮細胞は位置移動を行いません。一方、線維芽細胞のような間葉系細胞は位置を移動する運動能を持っているものもあります。
    がん細胞は悪性度が高まるにつれ上皮様(epithelial)の状態から線維芽細胞様の間葉(mesenchymal)の状態(上皮-間葉移行)へ、さらにはアメーバー様(amoeboid)への状態(間葉-アメーバー様移行:mesenchymal-amoeboid transition)へ形態を変化させることにより浸潤運動能を獲得することが明らかになっています。
    上皮-間葉移行では、上皮細胞相互間の接着に重要な役割を果たしているE-カドヘリンの発現量が減少し、塊を形成しているがん細胞が単細胞で遊走することが可能になります。さらに間葉-アメーバー様移行によって、がん細胞は周囲の結合組織の中を運動して離れた場所に移動することができます。
    E-カドヘリンは上皮細胞の代表的な接着分子であり、細胞間接着に寄与しており、がんの悪性度とその発現が逆相関することが知られており、E-カドヘリンの減少は上皮-間葉移行の重要な指標になっています。
    抗がん剤や放射線はがん細胞を死滅させる効果を治療に使用します。しかし、がん細胞の遺伝子に変異を引き起こして悪性度が強くなる可能性や、がん細胞の上皮-間葉移行を引き起こして転移や浸潤を促進する可能性が指摘されています。
    培養細胞や動物を使った多くの実験で、抗がん剤治療や放射線治療によってがん細胞の上皮-間葉移行が誘導され、転移や浸潤が促進されることが示されています。
 
    【丹参の上皮-間葉移行の阻害作用】
    がん細胞の上皮-間葉移行を阻害することができれば、転移や浸潤を抑制できることになります。そのような効果を持った生薬としてタンジン(丹参:Radix Salviae Miltiorrhizae)があります。タンジンは、シソ科のタンジンの根です。抗炎症作用や抗酸化作用を持っているので、炎症などの熱証を伴う血行障害の治療に適します。駆お血薬としての効果と同時に、補血と精神安定の効果も持ちます。中国では慢性肝炎や心筋梗塞や腎臓疾患の治療に使用されています。
    タンジンに含まれる水可溶性成分のSalvianolic Acid Bが、上皮-間葉移行で重要な役割を持つTGF-β系のシグナル伝達を阻害することによって、上皮-間葉移行を阻害することが報告されています。(BMC Cell Biology 2010, 11:31)
    この論文では、ダメージを受けた腎臓が線維化を起こすときに、TGF-βの作用によって上皮細胞が線維芽細胞様の細胞に上皮-間葉移行を行うことを示し、丹参に含まれるSalvianolic Acid BがこのTGF-βで誘導される上皮-間葉移行を阻害することによって腎臓の線維化を抑制する作用を報告しています。
    TGF-βはがん細胞の上皮-間葉移行でも重要な働きをしているので、丹参のSalvianolic Acid Bががん細胞の上皮-間葉移行を阻害してがんの転移や浸潤を抑制する効果が推測できます。
    前述のように、抗がん剤治療や放射線治療は、がん細胞の上皮-間葉移行を引き起こし、転移や浸潤を促進する可能性が報告されています。したがって、抗がん剤治療や放射線治療中の漢方治療に丹参を多く使用することは、がん細胞の上皮-間葉移行の抑制による転移が浸潤の予防に役立つ可能性が示唆されます。
 
 
丹参はシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の発現を抑制する。COX-2阻害剤のcelecoxib(商品名 セレブレックスまたはセレコックス)と併用して抗腫瘍効果が高まる。
 
    丹参の主要成分であるSalvianolic Acid Bがシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の発現を抑制し、低用量のCOX-2阻害剤(celecoxib)との併用で、頭頸部がん細胞の増殖を相乗的に抑制することが報告されています。
    Combination effects of salvianolic acid B with low-dose celecoxib on inhibition of head and neck squamous cell carcinoma growth in vitro and in vivo.(培養細胞および動物移植腫瘍の実験における、頭頸部扁平上皮がん細胞の増殖抑制に対する、Salvianolic acid Bと低用量のcelecoxibの相乗効果) Cancer Prev Res (Phila). 2010 Jun;3(6):787-96.
 
    【論文要旨】
    頭頸部のがんの発生には慢性炎症の関与が大きく、頭頸部のがん細胞はCOX-2活性が高くなっていることが報告されている。したがって、選択的なCOX-2阻害剤であるcelecoxibは頭頸部がんの予防や治療に効果があることが知られている。しかし、COX-2阻害剤の長期間の服用は副作用(心臓に対する障害など)も問題になる。
    丹参に含まれるsalvianolic acid Bはシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の発現を抑制する効果があることが報告されている。したがって、Salvianolic acid Bとcelecoxibを併用すると、副作用の出ない低用量のcelecoxibでも十分に抗腫瘍効果が期待できる可能性がある。
    この論文では、移植腫瘍を使ったマウスの実験で、celecoxibとSalvianolic acid Bをそれぞれ単独で投与した場合に比べて、両者を半分の量で併用した場合の方が、抗腫瘍効果が著明に増強することを報告している。このマウスの実験では、celecoxibは体重1kg当たり1日2.5mg、Salvianolic acid Bは体重1kg当たり1日40mgを併用している。両者を併用すると、がん細胞の増殖が抑制され、アポトーシスで死滅するがん細胞が増加した。
 
    がんの発生要因の約20%は感染症や慢性炎症が関与していると言われています。ウイルス性肝炎による肝臓がん、ピロリ菌感染による胃がん、潰瘍性大腸炎に合併する大腸がん、その他多くのがんで慢性炎症の存在は発がんを促進し、再発や転移にリスクを高める重要な要因となっています。
    慢性炎症によって活性酸素や一酸化窒素ラジカルの発生や、COX-2の発現増加によってプロスタグランジンの産生が高まることが発がん過程を促進する原因となります。したがって、活性酸素や一酸化窒素ラジカルを消去する抗酸化作用と、COX-2阻害作用などの抗炎症作用は、がんの発生や再発の予防に有効であると考えられています。
    丹参は、強い抗酸化作用とCOX-2の発現抑制作用の両方を持っているので、がんの治療や再発予防に効果が期待できます。
    Salvianolic acid Bは丹参の主要成分で生の根に約1~7%含まれています。中国の基準では、生薬として流通させるためには、Salvianolic acid Bを生の根の3%以上含むことが条件になっています。
    乾燥した丹参には10%以上のSalvianolic acid Bが含まれていると考えられますので、体重1kg当たり1日40mgのSalvianolic acid Bの摂取は、60kgの人で丹参を20~30g程度摂取する量に相当します。COX-2活性が高いがん(頭頸部がん、大腸がん、乳がん、肺がん、前立腺がんなど)の治療や再発予防には、1日200mg程度のcelecoxib(商品名セレブレックス、セレコックス)と20g程度の丹参を含む漢方薬は試してみる価値があると思います。
 
 
■ 丹参(たんじん)の基原
 
漢方生薬の「丹参」はシソ科の植物、タンジンの根を乾燥したものです。
 
タンジンは中国各地に分布するシソ科アキギリ属の多年草植物。
 
■ 丹参の名の由来
 
丹参は赤参とも呼ばれ、ともに根が赤いことに由来して名付けられたとされています。また、丹参の「丹」には、「赤」という意味の他に、「不老不死の薬」という意味があります。
 
■ 丹参を含む漢方処方
 
「丹参散」「丹参酊」「丹参飲」「冠心Ⅱ号方」「冠元顆粒」???など
 
※ 「冠心Ⅱ号方」は、中国において、虚血性心疾患(狭心症?心筋梗塞)の治療の
  ために開発されたものとして有名な漢方処方です。
 
 
■ 丹参の効能
 
漢方文献による丹参の効能
 
①     瘀血を除く。 →「瘀血を知る」を参照
 
②     腫物を消す。炎症を抑える。
 
③     イライラ、不安感を抑える。鎮静作用。
 
④     女性の月経にかかわる諸症状を改善する作用。
   〈また、月経が中断しているときに用いる治療法〉
 
 
■ 瘀血(おけつ)を知る
 
ここでは丹参の効能のところででてきた「瘀血」についてお話したいと思います。
 
漢方?中医学の解説書には、
 
「瘀血とは、血液の運行が阻滞されて生じた病理産物、または血脈外に逸出した離経の血が積滞した状態」
 
と書かれています。〈離経の血の例としては内出血などがあります〉
これらは、単語が専門用語なので難しくてよくわからないかもしれません。
 
そこで、「瘀血」を現代的に解釈すると
 
「瘀血とは、血行不良によってできた古い血、または内出血、または血栓など、体内で生成して局所に留まった体内の異物」
 
と言いかえることができるでしょう。
 
うーん、これでもピンとこない?という方に、具体的な瘀血の症例を挙げてみましょう。
 
●皮膚に青紫色、黒色の変色
 
→ 目の下のクマ、打撲の跡の「あおたん」、内出血など
 
●しこり、腫れ物
 
→ 大腸ポリープ、子宮筋腫、痔など
 
●固定した、刺すような痛み(しこり?変色等が確認できない場合もある)
 
→ 筋肉痛、神経痛、生理痛、関節痛、腹痛、胸痛(狭心痛)など
 
 
実際、瘀血というのは病理的な存在(血栓、しこり、内出血)だけではなく、症状から漢方理論を基に推察する原因の概念として認識されています。例えば、体に刺すような痛みがあるが、腫れや出血がなく、現代医学検査で異常なしの場合でも、その他の症状や体質を考慮してこれを「瘀血」と捉えて治療する。
また、胸の刺すような痛みを自覚する場合、画像検査するまでもなく、その他の体の所見を基にして、これを「瘀血」と捉えて治療する。これが漢方の瘀血です。
さらに現在は、瘀血スコアというものを活用して、その症状に対してどのくらい瘀血が関与しているかを見極めて処方を決定する手法がよく使われています。
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